木造住宅の耐震診断とは
木造住宅の一般的な耐震診断は、
で実施します。 |
一般診断法で解析可能な木造の建物は、「3階建て以下・建物高さ13m以下・軒の高さ9m以下の特殊な形状ではない建物」になります。スキップフロアーなどが有る複雑な形状の建物は一般診断法での解析になじみません。そのような建物は構造材、部材の接合方法等を特定し精密診断法で診断するので、部材を確認するために建物の一部の破壊検査が必要になることがあります。
一般的な木造住宅の耐震診断の流れ
- 依頼者からの依頼とERIソリューションでの引受
- 建築時の図面・図書(構造=柱のサイズや筋交いの位置などがわかるもの)の確認
- 現地調査 (詳細下記)
工法の確認、耐力壁の配置、構造の部材、接合部の仕様、構造金物の種類などを調査 - 調査結果をもとに構造の各要素を判定し解析ソフトに入力(詳細下記)
- 調査結果の報告
(工法について)
木造住宅は大きく在来軸組工法、枠組壁工法(2X4工法)、特殊なパネルを活用した工法、伝統的工法に分けることができます。
大規模な地震の被害があるとその原因を検証してより建築基準法は安全側に改正され、木造住宅は、構造金物の取り付けやバランスの良い壁の配置が求められるようになっています。新耐震基準(1981年6月以降の建築確認)で建築されていても古い時期に建築された在来軸組工法は現行の基準法に基づく耐震診断では、強度が十分でないことが多くあります。
その部材や工法がスタンダード化された壁で構成される枠組壁工法(2X4工法)は現行の耐震診断の解析になじみやすく、伝統工法は、壁ではなく柱・梁で構造が構成されており、接合部に金具が使用されていないことが多いので一般診断になじまない可能性があります。住宅メーカ等が提供する木造住宅では、大臣認定された独自の木質パネルにより構造計算されていることがあり、一般的な耐震診断では対応できないことがあります。
(耐震診断の調査項目)
地盤 | : | 土地条件図および近隣の状況から地盤の状況を判断 |
基礎 | : | 基礎内部の鉄筋の有無を機器で測定し、劣化状況を確認する。 |
図書と耐力壁等 | 耐力壁の位置(開口部の位置・大きさ等)、図書と間取りの整合性などの確認 | |
建物の仕様 | : | 屋根材の種類(屋根の軽重)・外装材の種類(耐力の有無)等 |
構造材 | : | 柱・梁・各耐力壁の種類(構造用合板や石膏ボード・その厚みなど)、筋交い等の有無・サイズ等の調査 |
構造部材接合部の金物 | : |
地震で倒壊した建物の検証から、構造部材の接合部の強度が重要であることが分かっていますので、1階・2階を接合する金物や筋交金物の有無・接合方法を確認します。接合部がわからない場合は、小屋裏や床下の施工状況や建築年代から推測します。 |
劣化状況 | : |
構造を軽減する建物の傷み具合を調査します |
(調査方法)
小屋裏・床下の点検口から覗き込んだり、点検口内部に進入したりして基本的には目視で調査すると同時に、ファイバースコープや筋交いセンサーなどの機器を使い壁の中のボードや筋交いなどのサイズや位置を推測します。確認できない箇所の筋交いのサイズや金物の接合状況などは建築の年代やその他の箇所の施工状況から推定します。
現場の調査で筋交いの位置が図書と違っていたり、接合金具がついていなかったりまた種類が違ったりすることが頻繁にあります。できる限り丁寧に現場で調査することで実際の建物の実態に沿った診断になります。
(解析ソフトへの入力)
現地調査の結果に基づき認定ソフトに入力します。
提示された設計図書と現場調査が整合しない場合は現地で確認できたことを優先します。構造材の劣化・雨漏り等の有無や築年数による劣化係数を入力します。
入力した図面から算定される各階の重心と耐力壁の位置に基づく各階の強度の中心を解析します。各階の重心と強度の中心のズレ(偏心率といいます)が大きいほど、地震の際に揺れによる建物の捻じれが生じやすいので、より強い耐力が必要とされます。
(解析結果の報告)
解析した各階、各階のX・Y軸方向の「保有耐力/必要耐力」のうち最も小さい数字がその建物の評点になります。
必要耐力 | : |
各階の床面積に建物の階数・重さ・積雪エリア・地盤の状況・形状割り増し等をかけたもの |
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保有耐力 | : |
各階、X軸・Y軸それぞれの方向の壁の耐力・配置・劣化をかけたもの |
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評点1.5以上 |
: |
倒壊しない |
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評点1.25~1.5 |
: |
一応倒壊しない |
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評点1.0~1.25 |
: |
一応倒壊しない |
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評点0.7~1.0 |
: | 倒壊する可能性が有る | ||
評点0.7未満 |
: | 倒壊する可能性が高い |
になります。
耐震診断の評点は、建築時の設計図書の有無・現地調査の丁寧さ・診断員の推定や判断により、その結果がかわることがあります。
実態に近い診断を受けるには第三者の耐震診断をお勧めします。
以上。